近年、退職代行サービスの利用が増えてきています。
退職代行サービスは、もはや知らない方はいないほど有名なサービスになりました。職場環境の問題やパワハラなどで退職を希望していても、自分で伝えるのが難しい場合に、退職代行業者が代わりに退職の意思を伝えてくれるというものです。
こうしたサービスと、弁護士のサービスはよく比較対象とされていますし、弁護士法との関係で問題点が指摘されている場合もあります。他方で、退職代行サービスは弁護士に依頼する場合と比べて、より安価かつスピーディに「退職」の結果を得ることができることも確かです。
そこで、本記事では退職を会社に伝える前に考えることを確認し、退職代行サービスと弁護士を比べてより合理的な選択肢を検討します。
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先行する会社の働きかけがきっかけかどうかを考える
例えば、あなたがおかしな業務指示に反対したら、会社から「お前はこの店には不要だから退職しなさい」といわれた…などの場合、不当な退職勧奨行為あるいは不当な解雇であるとして争うかどうか等を検討する余地があります。
このように、先行する会社の働きかけの内容によっては安易に退職を合意しない方がいいケースがありうるのです。
弁護士に相談すると、まずこれらの点を明らかにすることができます。本件の経緯から不当な解雇といえないか、自身に解決金の請求権があるといえるか、こういった事情の精査、選別が可能です。企業側が不当な対応をしていると考えられる場合には法的に対抗することができるため、退職通知後に気付いて泣き寝入り…という状況を回避することができます。
会社側が退職や自宅待機を示唆した上で「これは解雇通知ではない」などと主張する場合にも不当解雇を争いうる場合があることや、退職勧奨が強引すぎてご自身に復職意思がなくなってしまった場合でも不当解雇を争いうる場合があることなどは、それぞれ別記事に譲ります。
退職代行サービスは、前述のとおり金銭請求などの具体的な交渉ができない上、このような内容を聴取し法的にどうすべきかをアドバイスすることは「法律相談」(弁護士法74条2項)に当たると解されるため、そもそもこういった事情の聴取やこれに関する助言をすることも許されません。
そのため、退職代行サービスは事実上、依頼者の自己責任の下で運用されています。依頼者は会社に退職を伝えることによってどのような法的効果が発生しても、自身の行動の結果として受け入れることを前提とされていると解されます。
退職を通知した後のことを考える
退職代行サービスは、基本的に退職の意思を会社に伝えるだけの業務を行います(弁護士法72条等)。法的な交渉権限がないため、有給休暇の消化、未払い給与の請求などの問題が発生した際には、企業と交渉することができません。
そのため、これらのような問題がすでに生じている場合には弁護士に相談して、退職を伝えるのみならずこれらの請求もすべてワンセットで依頼してしまう方が結果としては安価(場合によってはプラス)ということになります。
また、退職時に企業側が嫌がらせをしてくる可能性がある場合、弁護士が間に入ることで事実上の抑止力が働き、スムーズな退職が実現しやすくなります。たとえば、弁護士から会社に対する受任通知の段階で、本人にはご連絡をしないようあらかじめ記載しておくなどの方法で、不当な圧力を回避するなどの対策が考えられます。
消極的な嫌がらせの場合でも同様です。たとえば、会社が私物を返してくれない場合などには、これを返し、または相当額で弁償するよう弁護士を通じて交渉することなどが想定されます。
退職に至るまでの自身の行動の内容を考える
例えば、退職を決意した理由が「自身のミスで会社に大損害を負わせてしまった。このまま会社にいるのが気まずい。」というような場合、会社から損害賠償請求を受ける可能性があります。もっとも、会社からの損害賠償請求が成功するケースというのは過去の判例上もかなり限定されています。
自身が退職を申し入れたときに、退職代行サービスから単に退職の通知のみを送付した結果、会社から損害賠償請求を受けることとなり、結局弁護士を雇わなければいけなくなるなどの事態を生じかねません。
そこで、最初から弁護士を介在させ、会社への退職通知の段階で会社に対して弁護士が代理をしていることをアピールすることが方法として考えられます。会社側としても、無理矢理に損害賠償請求をするのではなくまずは会社側の弁護士に相談するなどの冷静な対応を取る方が合理的であると思われますし、また万が一無理矢理な請求がされたとしても、当方の弁護士がそれを見てある程度の当不当の判断ができるので、協議の準備が十分にできて安心につながるものといえます。
退職理由との関係
退職の理由は、離職票に記載されます。通常はこの理由の如何によって失業保険の支払いをいつから受けられるのかやいくら受けられるのかという点で差を生じます。前述のような、退職に至るまでの経緯を考えず単に会社に退職を伝えただけとなると、退職理由が完全な自己都合退職となってしまいます。
この場合、退職に至るまでの経緯を前提として会社側と交渉し、退職理由が完全な自己都合でないことについての合意を得るメリットが生じることになります。
失業保険の詳細は最寄りのハローワークにお問い合わせください。
まとめ
このように考えると、弁護士に何も相談しないまま退職代行サービスに退職を伝えてもらっても何の問題も生じない場合というのは、
① 会社に何らの問題もなく
② 自身にも何らの問題もなく
ただ単に退職を伝えたい場合に限られると考えられます。
また、本人が会社との対応に疲弊してしまってもう何も請求できなくてもよいと考えている場合に、すべての請求権を放棄する覚悟で退職代行サービスに依頼をするということはあり得るかもしれませんが、このような方針に何らの問題もないと結論付けることには疑問もあります。
病気になった時には自身で治療せずまずは医院に行くのと同じく、自身の退職という重い決断をする前には弁護士に相談してほしいと考えています。
労働事件でお困りの方へ
横浜市、上大岡の弁護士へのご相談は、上大岡港南法律事務所まで。
お問い合わせはお電話(045-315-6585)またはお問い合わせフォームから。
退職代行サービスは手軽に利用できるものの、法的交渉が代行者の業務に含まれ得ないため、会社との間でトラブルが発生した際のリスクがあります。
弁護士の立場からすれば、このような事態に陥った場合にはまずはご自身のみで判断せず、まずは弁護士にご相談いただきたいと思います。
弁護士に相談した結果、依頼まではしなくてもいい(退職代行サービスを利用するので十分な)ケースであることが初めて確認できたというような場合もあります。今、どうすればいいのか。それがわかるというのも弁護士に相談するメリットではないでしょうか。
法的トラブルについて心配なく退職したいという場合には、確認の意味も含めて弁護士に相談することをお勧めいたします。お悩みの方がいらっしゃいましたらぜひご連絡ください。

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